LIGHT+CANARYについて
さいとう化粧品の歴史
かつて本庄市の中心商店街であった銀座通りに、さいとう化粧品は店を構えていました。昭和30年代から40年代にかけて、銀座通りは歳末の福引セールなどで大変な賑わいを見せ、さいとう化粧品もその中心的な存在の一つでした。
当時の銀座通りは、映画館や多くの商店が軒を連ねる、本庄市で最も華やかな場所でした。さいとう化粧品は、この通りで化粧品や日用雑貨などを扱う店として、地域の人々の暮らしに密着した存在でした。
歳末に銀座通り商店街が主催した福引セールは、特賞の自動車を目指して多くの買い物客が殺到する名物イベントでした。さいとう化粧品もこのセールに参加し、商店街全体の活性化に貢献していました。当時の写真には、福引会場に集まる大勢の人々とともに、さいとう化粧品の看板が写っているものも残されています。
モータリゼーションの進展や郊外への大型店進出など、時代の変化とともに商店街の姿も変わっていきました。その後、さいとう化粧品は銀座通りから現在の場所(本庄市駅南2丁目)へ移転し、現在も営業を続けています。
銀座通りの建物はその後、オーナーのご家族が住む空間として残り続けました。
本庄デパートメントとの出会い
「本庄デパートメント」は、移住者と地元の人々が協力し、本庄市の中心市街地である銀座通りの空き家をリノベーションして、新たな価値を創造するプロジェクトを複数手がけています。
åå旧さいとう化粧品店は銀座通りの中ほど、角地に位置する3階建てのビル。かつては1階が「さいとう化粧品」の店舗で、2階と3階が住居という、商いと暮らしが一体となった商店街の典型的な建物でした。店主の移転後、長年空き店舗となっていました。
このプロジェクトは、シャッターが閉まりがちな商店街に新しい人の流れを生み出し、「居場所」を作ることを目的としています。多様な才能を持つ人々が集まることで、商店街全体の活性化に繋げたいという思いが込められています。
この建物をリノベーションし、アトリエ、事務所、スタジオ、ギャラリー、小さなお店など、複数の個人やグループが共有する「シェアビルディング」として再生させることを目指しました。
この拠点は、クラウドファンディングなどを活用して多くの人々を巻き込みながら改修が行われました。単なる商業施設ではなく、地域の人々と移住者、クリエイターなどが交流し、新しいコミュニティが生まれる「とまり木」のような場所となっています。
自分たちの手による解体作業からDIY施工
かつて銀座通りの角にあった化粧品店が、「LIGHT+CANARY」という名のシェアビルディングへと生まれ変わる。このプロジェクトは、ただ建物を新しくするだけではありません。多くの人が関わり、空間を作り上げる「プロセス」そのものを大切にしています。
再生の第一歩は解体作業から。まずプロの手で建物の安全な土台を整えた後、DIYワークショップに集まった参加者たちがバトンを受け継ぎました。古い天井や壁を一枚一枚剥がしていくと、建物の歴史を刻んだ骨格が静かに姿を現します。
そこからは、まっさらな空間に新たな命を吹き込む創造のステージです。床を張り、壁を塗り、窓枠を整える。SNSなどを通じて集まった地元の人々、移住者、学生たちの手によって、少しずつ空間が彩られていきました。
このプロジェクトの本当の価値は、建物が完成することだけにあるのではありません。共に汗を流す中で生まれる会話や笑顔、そして新しいコミュニティそのものにあります。「自分たちの手で、まちに新しい居場所を作る」。その温かい想いが、本庄のまちに新しい風を吹き込んでいます。
想いを繋ぎ、まちを動かすクラウドファンディング
旧さいとう化粧品店を「LIGHT+CANARY」として再生させた挑戦。その原動力となったクラウドファンディングは、単なる資金集めではありませんでした。「シャッターの増えた商店街に賑わいを取り戻す」という物語を掲げ、その物語を共に創る「仲間」を集めるための取り組みだったのです。
支援者を「お金の提供者」ではなく「プロジェクトメンバー」として捉え、DIYへの参加権など、当事者意識を高める工夫を凝らしました。さらに、SNSで作業の進捗をこまめに発信することで活動の透明性を高め、その熱意が画面越しに伝わることで、新たな支援の輪が着実に広がっていきました。
こうしてクラウドファンディングは、「本庄のまちを面白くしたい」と願う人々の想いを繋ぐプラットフォームとなり、資金集めの枠を超えた大きなムーブメントを生み出す起爆剤となったのです。
LIGHT+CANARYの今とこれから
多くの人の手によって再生された銀座通りの角のビル、「LIGHT+CANARY」。あの熱気に満ちたDIYの日々を経て、今、この場所は本庄のまちに新しい光を灯す確かな存在となっています。
かつて化粧品店だった1階のスペースは、訪れるたびに出会いが変わるポップアップストアやギャラリーとして機能し、屋上テラスからは人々の楽しそうな笑い声が聞こえてきます。ここは単なるビルではなく、新しい文化が生まれる発信地であり、人と人が繋がるコミュニティの交差点なのです。
その中心にいるのは、ここに集う人々です。入居者同士は単なる「店子(たなこ)」という関係を超え、誰もがLIGHT+CANARYの物語を未来へ紡いでいくプロジェクトメンバーとなっています。
この場所が灯した光は、一つの建物を照らすだけでなく、まちの未来を照らす道しるべとなるはずです。本庄のまちは、これからもゆっくりと、しかし確実に面白く変わっていくことでしょう。